闘牛の基礎知識

(平成17年11月25日現在)
◯闘牛の由来
闘牛は古く、藩政時代の頃から行われ約500年の歴史があるといわれています。
砂糖地獄に苦しめられた農民が、ようやくの思いで税として完納できた収穫の喜びを祝って行われたといわれ、島民の唯一の娯楽でした。
それだけに闘牛に熱い情熱をかたむけ、牛は勿論、勢子(せこ)、観客が一体となって盛上がり、勝牛を囲んでの手舞が一層の熱狂をさそいます。
◯運営
戦前までは牛主同士が相談し合って、島の行事が行われる際に川原や浜・荒畑で催していた。
戦後、徳之島闘牛組合が設立され、組合規約をつくり、入場料を徴収して運営されるようになった。
昭和42年に徳之島、伊仙、天城の三町に闘牛協会が組織され、この三町の協会をまとめたのが「徳之島闘牛連合会」である。
本場所の全島大会は各町の協会が主催して行われる。
◯全島大会
初場所(正月)・春場所(5月)・秋場所(10月)の年三回、島の名牛が選抜され全島大会が行われ、各町の持ち回りで開催される。
また、全島大会と前後した日やお盆には、牛主同士が出資して各地の闘牛場で興業が行われている。
◯タイトル
徳之島の闘牛におけるタイトルの最高峰は、横綱の中の横綱である「全島一チャンピオン」である。
牛主は愛牛が横綱になり、「全島一チャンピオン」のタイトルを獲得することを夢見て、日々飼育に励むのである。
また現在の闘牛は体重差があるため、タイトルとして900キロクラス「中量級」、830キロ以下「軽量級」、700キロクラス「ミニ軽量級」としてタイトル戦が行われている。

◯組合せ
主催者側が双方の牛主と話し合い、期待の好取組みを練り上げて行く。一度の交渉では決まらず、何度か掛け合い条件が合わなければ、新たな相手を捜し交渉することになる。
番付は相撲に準じ、前頭から横綱までがある。過去の実績や角合わせ(練習試合)によって格付けされる。
◯勝 敗
闘牛の勝敗は、相手牛が逃げて勝牛となる。時には相手牛を角で突き刺し、勝負ありと判定されることもある。
早い勝負で数秒、長引くと数時間闘うこともある。最近は、25分・30分と制限時間を設けたり、勝敗が決しそうに無い場合は観客の同意を得て引分としている。
◯牛 主
昔の闘牛は無料で行われたため、飼育や闘牛大会出場に大変な出費がひつようだったため、闘牛を飼えるのは富農に限られていた。
現在では、農家、事業主をはじめ、友人同士や同級生が共同で飼育する等様々である。
◯闘牛の年令
闘牛としてデビューするのは3才過ぎぐらいからで、試合を重ねるごとに技も覚えてゆく。横綱級は7〜9才が多く、この頃が円熟期である。
◯飼育法
通常はサトキビの葉などの草類と配合資料を与えるが、牛主それぞれの工夫があり、卵や鶏のスープ、焼酎なども飲ませる。また、試合が近づくとそれぞれの配分方法を変えるなどして臨戦体制を整えていく。
◯闘牛の重量
昔の牛は大きくても6・7百キロ前後だったが、現在では大型化し、1トンを超える巨大な牛も出て来ている。
そのため全島一チャンピオンを決めるタイトル戦は、1トン前後の大型牛同士の激突となっている。
◯トレーニング
闘牛向きの牛は十頭に一頭、横綱牛は百頭に一頭といわれる。闘牛用の牛は若いときから、足腰を鍛えるための散歩、角突きの練習、鼻綱を引いたままの練習試合をすることによって、少しずつ技や攻め、勝負どころを教え込む。
◯勢子(セコ)
勢子は闘牛士のことで、昔は牛主自身、または一族のなかの若者がしていた。
現在はプロの勢子がおり、牛主は自分の牛の気性をよく知っている勢子に依頼する。勢子は牛と一体になって励まし、攻撃を促し勝利を導くよう努力する。
◯角研ぎ
牛の二つの角を槍のようにとがらせること。試合の約三週間前に角の粗研ぎをし、前日又は当日の朝、ビール瓶の破片やガラスのかけらから良い物を選んで、丁寧に仕上げをする。この角が闘う上で最大の武器となる。
◯試合の前日
夕方から親戚、友人、知人が焼酎を持って牛主の家に集まり、翌日の相手牛の得意技と闘い方はじめ闘牛談義に花が咲き、牛主は愛牛の勝利を期待する。
◯鼻 綱
闘牛が行われている地域によっては鼻綱を付けたまま闘うところと、切って闘うところがある。徳之島の闘牛は後者であり、戦闘開始後頃合を見計らって勢子が外したり鎌でサッと切る。自由になった牛はより一層闘志をみなぎらせ、闘いをくりひろげる。
◯出 陣
先祖の仏壇に優勝祈願をし、牛の角に酒と塩をかえる。集まった一族、友人・知人にも同じ酒と塩を配り出陣の儀式を行う。
入場の際は、牛主もしくは勢子が綱を引き、露払いが塩を撒き、ラッパ・太鼓を吹き鳴らし「ワイド、ワイド」の掛け声が闘牛場まで続く。
◯勝ちどき
勝ちが決まった瞬間、一族一統が場内になだれ込み、勝牛に飛び乗り、手舞い、足舞い、指笛で歓喜する。ラッパ・太鼓の音も一際高く鳴り響かせ場内を意気揚々と一周する。

参考文献 :松田幸治著「徳之島の闘牛」南國出版
       小林照幸著「闘牛の島」新潮社